三九 山中
原文
- `温泉に浴す
- `其効有明に次と云
- `山中や菊はたをらぬ湯の匂
- `あるじとする物は久米之助とていまだ小童也
- `かれが父誹諧を好み洛の貞室若輩のむかし爰に来りし比風雅に辱しめられて洛に帰て貞徳の門人となつて世にしらる
- `功名の後此一村判詞の料を請ずと云
- `今更むかし語とはなりぬ
- `曾良は腹を病て伊勢の国長島と云所にゆかりあれば先立て行に
- `行々てたふれ伏とも萩の原
- `曾良
- `と書置たり
- `行ものの悲しみ残もののうらみ隻鳧のわかれて雲にまよふがごとし
- `予も又
- `今日よりや書付消さん笠の露