二一 末の松山

原文

  1. `それより野田の玉川沖の石を
  2. `末の松山は寺を
  3. `末松山
  4. `といふ
  5. `松のあひあひ皆墓はらにて
  6. `はねをかはし枝をつらぬる
  7. `
  8. `はかくのごとき
  9. `と悲しさもりて塩がまの浦に入相のかねを
  10. `五月雨の空はれて夕月夜が島もほど近し
  11. `小舟こぎつれてわかつ声々に
  12. `つなでかなしも
  13. `とよみけん心もしられていとど
  14. `目盲法師の琵琶をならして奥るりとものをかたる
  15. `平家にもあらず舞にもあらずひなびたる調子うちて枕ちかうかしましけれどさすがに辺土の遺風忘れざるものから殊勝にらる